ベンチプレス
ベンチプレスは、こう動かす
効く場所:大胸筋(あわせて働く:上腕三頭筋・三角筋)
動かす範囲:胸の下部まで下ろす 〜 肩を出さずに押し切る
外せない点:
- 背中に土台を作る
- 足と尻は固定する
- 下ろす位置をそろえる
- 押し切りで肩をすくめない
やり方
動作は下ろす・押し上げるの2つだけです。差がつくのは、バーを外す前の構えのほうです。
背中に土台を作る:ベンチに寝たら、バーを外す前に肩甲骨を寄せて下げます。胸がやや持ち上がり、肩が耳から遠ざかった状態。このとき腰とベンチのあいだに手のひらが1枚入るくらいの隙間ができます。ジムで言う「アーチ」はこれのことで、腰を反らせて作るものではなく、胸を張った結果として出るものです。逆に腰をベンチへ押しつけて平らにすると土台が崩れ、押す力の出どころが胸から肩の前側に移ります。
足と尻は固定する:足裏は床につけたまま、尻はベンチから離しません。下半身が浮くと上体が安定せず、バーの軌道が1回ごとに変わります。尻が浮くほど反ると、体を支えているのが土台ではなく腰だけになります。反りの上限は、尻がベンチに残っていること。ここを超えるなら、反りを深くするのではなく重量を落とします。
下ろす位置をそろえる:胸の下部から中部あたりが目安。手幅と腕の長さで最適な位置は動くので、下ろしたときに前腕が床と垂直になる場所を探します。
押し切りで肩をすくめない:胸に触れたら止めずに押し返します。ただしバーを胸で跳ね返させません。触れた深さを保ったまま、素早く切り返します。肘を伸ばしたところで肩が前に出ると土台がほどけるので、肩甲骨を寄せたまま1回を終えます。
呼吸は、下ろしながら吸い、押し上げながら吐きます。
補助者がいないときは、重量を載せる前に空のバーでセーフティの高さを決めてください。胸まで下ろしても当たらず、力尽きて脱力したときには受け止める高さです。
ベンチプレスとは
ベンチに仰向けになり、ラックから外したバーベルを胸まで下ろし、また押し上げる。この上下1回を繰り返すのがベンチプレスです。肩と肘が同時に動くため、胸の筋肉だけでなく、肩の前側と腕の裏側も一緒に働きます。
スクワット・デッドリフトと並ぶ「BIG3」の一角で、パワーリフティングでは競技3種目のひとつとして記録が計られます。上半身で押す動作のなかでは最も重い重量を扱えるため、押す力のものさしとして長く使われてきました。ジムで「何kg挙がる?」と聞かれるのは、たいていこの種目です。
挙がる重量は筋肉の量だけでは決まりません。腕が長いほどバーの移動距離は伸び、胸郭が厚いほど距離は縮みます。同じ体重・同じ筋量でも記録に差が出るのはここが理由で、他人の数字と並べても得るものは少なくなります。伸びを見るなら、自分の3か月前と比べます。
はじめての人にとっては、フォームが固まるまでの数週間が最初の関門になります。続けている人にとっては、止まったときに疑う場所が多い種目です。胸なのか、腕の裏なのか、背中の土台なのか。どこが足りないかで次にやることが変わります。
長所・短所
この種目ならではの強み
- 上半身の押す種目で最も高重量を扱える:プレートを1枚ずつ足していける。上半身で押す力は、この種目で伸ばしていく。
- 胸と肩の前と腕が1動作で働く:肩と肘が同時に動く複合種目。時間のない日は、これ1つで押す側が片づく。
- 成長が重量の数字でわかる:何kgを何回挙げたかが記録に残る。前回より1回多く挙がれば、それが続ける理由になる。
弱みと、その付き合い方
- フォームの習得難度が高く、肩を痛めやすい:肩甲骨を寄せずに押すと、負担が肩の前側へ集まる。軽い重量で構えを固めるのが先。
- 胸を深く伸ばす可動域はダンベルに及ばない:バーが胸に当たって止まるので、下ろせる深さはそこで頭打ち。深さが欲しい日はダンベルベンチプレスを足す。
- ひとりで限界に挑むにはリスクがある:潰れるとバーが胸の上に残り、自力で抜け出すのは難しい。
こう付き合う:重量を載せる前に、空のバーでセーフティの高さを決める。可能なら補助者を頼む。
ひとことで:セーフティを掛けてから1枚目を足す。そこを守れば記録は伸びる。
よくある質問
- 何kgから始めればいいですか?
- まず、そのジムに置いてあるバーの重さを確かめてください。20kgが多いものの、15kgや軽量バーを置くジムもあります。そのバーだけで10回、フォームを保って動かせるかが出発点です。そこから、あと2〜3回は挙がる余力を残せる重さで8〜12回を組み、その回数を全セットでこなせた日に少しだけ足していきます。体重の何倍という数字は、体格でも器具でも変わるので基準に使いません。
- 何回・何セットやればいいですか?
- 筋肉を大きくしたいなら8〜12回を3〜4セット、力そのものを伸ばしたいなら3〜5回を重めで。ただし回数そのものより、週にどれだけの量を積めたかが効いてきます。どのセットも、あと1〜3回は挙がる余力を残して切り上げてください。
- ひとりのとき、潰れたらどうすればいいですか?
- セーフティを設定してあれば、バーを一度胸に置き、体を足側へずらしてバーの下から抜けます。設定していない場合に安全な逃げ道はありません。ひとりで行うなら、セーフティのあるラックを選ぶところが出発点です。
- アーチ(腰の反り)は作ったほうがいいですか?
- 胸を張れば腰は自然に少し浮きます。ジムで言う「アーチ」はこれのことで、わざわざ作りにいくものではありません。腰とベンチのあいだに手のひらが1枚入るくらいが目安です。深く反るほどバーの動く距離は短くなるので、挙がる重量は伸びます。ただし胸が伸びる範囲も同じだけ狭くなり、その差が筋肉の育ち方にどう効くかははっきりしていません。記録を狙うなら反りは武器、胸を大きくしたいなら控えめに、くらいの使い分けで足ります。どちらにしても、尻がベンチから浮いたら反りすぎです。もともと腰に痛みがある人は反りを深くせず、その範囲で扱える重量にしてください。痛みが続くなら整形外科で診てもらってください。
- 肩が痛むのですが、続けていいですか?
- 肩甲骨を寄せずに押すと、負担が肩の前側に集まります。まず重量を2割落として構えから作り直してください。それでも痛むなら、その日は中止します。
- バーベルとダンベル、どちらを選べばいいですか?
- バーベルは左右が1本でつながっているぶん重い重量を扱えます。ダンベルは左右が別々に動くので、人によっては胸を深く下ろせます(肩の可動域とベンチの高さによります)。重量を伸ばしたいならバーベル、左右の差をならしたいならダンベル。セーフティのない場所ではダンベルです。潰れても体の横へ落とせます。